過去の記事一覧
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小説:ジョニーエンジェル 作:沙木実里
(53)わたしたちの「その後」(53)わたしたちの「その後」 やっと日本に帰ってきたゼンさんは、撮影所のトラブルをあっという間に片付けた。それはアメリカで相当の訓練をしたものと思われ、誰もがゼンさんはそのまま撮影所の仕事を続けるものと確信した。 ところが、ゼンさんは再び姿を消し、行方が…
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小説:ジョニーエンジェル 作:沙木実里
(52)会いたい 5月25日版(52)会いたい 航空便で四角い包みが届いたとき、それがゼンさんからだとすぐにわかった。 ゼンさんが日本を離れた詳しい事情は、だれにも訊ねなかった。ゼンさんが決めたことだ。それが最善の方法だったにちがいない。 「あ、もしかして、それ、ゼンさんから?」 …
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小説:ジョニーエンジェル 作:沙木実里
(51)ゼンさんの行方 5月18日版(51)ゼンさんの行方 久しぶりに俳優の浅倉厳さんがやって来た。日曜日なのに父がはやくから起きているのも、日常のなかのちいさな異変だ。 母にいわれる前に、わたしは二階の部屋にもどったが、階下の話が気になった。アサクラゲンさんは、消息を断ったゼンさんのことを…
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小説:ジョニーエンジェル 作:沙木実里
(50)モンローが死んだ 5月11日版(50)モンローが死んだ ゼンさんの恋の相手は母ではないか、とみっちゃんが涼しい顔で言い放ってから、母とゼンさんを観察していたが、そう思わせるようなことはひとつもなかった。それにゼンさんの失恋のテーマ曲の「カタリ、カタリ」はもう何度も聞いた。その曲を聞くのが失…
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小説:ジョニーエンジェル 作:沙木実里
(49)ゼンさんの恋 5月 4日版(49)ゼンさんの恋 一時水泳部に移ったみっちゃんは、ふたたび体操部に戻ったが、増えてきた体重に悩まされていた。鉄棒を握るのも平均台の上を歩くのもきつい。だが、いちばん悲しいのはマット運動だという。 「まるでオキアガリコボシみたいなんだもん」 太くなった…